令和3年度 熊本大学入試解答速報!

(注)このページに掲載の解答は速報版ですので、熊本日日新聞に掲載されたものとは異なる場合があります。また、解答や解説に訂正等があった場合は、予告なく変更する場合があります。ご了承ください。


令和3年度 熊本大学個別学力試験 解答速報(2021.2.25)

 壺溪塾では地元熊本の予備校として、熊本大学から出題される前期試験の入試問題研究を永年に亘り行って参りました。また、毎年、詳しい熊本大学入学試験解答・解説集を作成しております。さらに例年、壺溪塾のホームページに解答の速報版をアップし、二次試験の翌日には熊本日日新聞紙上に壺溪塾作成の解答が掲載されます。ここには、新聞紙上には紙面の都合で掲載されない小論文、地学の解答例も含めた全体をまとめました。ご参照ください。

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  英語 国語 小論文 数学@ 数学A 数学B 物理 化学 生物 地学
分量 昨年並 昨年並 やや減少 やや増加 昨年並 やや増加 増加 やや増加 やや増加 昨年並
難易度 昨年並 昨年並 やや易化 やや難化 やや難化 やや難化 難化 昨年並 昨年並 やや難化
大問1 やや難 やや易 標準 標準 やや難 やや難 標準 標準 標準
大問2 やや難 やや易 標準 やや易 標準 やや難 標準 標準 標準
大問3 標準 標準 標準 標準 標準 標準 やや難 やや難
大問4 標準 標準 やや難 やや難 標準
  解答 解答 解答 解答 解答 解答 解答 解答 解答 解答
  解説 解説 解説 解説 解説 解説 解説 解説 解説 解説

(注)分量(減少−やや減少−昨年並−やや増加−増加)と難易度(易化−やや易化−昨年並−やや難化−難化)は昨年比、
大問別の難易度(易−やや易−標準−やや難−難)は例年比で、各5段階で評価

解答をクリックすると、各教科の解答がPDFで表示されます

 

【英語】

解説
 全体的に問題量としてはあまり変化なく難易度もほぼ変わらずであった。

 Tは長文読解で、設問は去年より1つ増えた。内容が「洞窟壁画による人間の想像力」について。それほど難しくはなかったが和訳には時間がかかったかもしれない。

 Uは昨年同様、受験生にとっては苦手意識のある物語・エッセイタイプの問題。時代背景の読み取りもあったが難易度は去年並みであった。

 Vの英作文は自由英作文で今年は社会的なテーマ。「夫婦別姓」についての意見が求められた。妥当性のある意見を考え出し、論理的な説明ができるかがポイント。

 Wは英文の空所を補充する問題。全体の文脈と文法に注意して空所を埋める。これも例年と同じ出題形式で、難易度的には去年並みであった。

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【国語】

解説
大問一 現代文(今井むつみ「ことばのセンスを育てる国語教育」による)
大問二 現代文(菊池寛「大島が出来る話」による)
大問三 古文(『大和物語』による)
大問四 漢文(『説苑』による)

大問一
 昨年度よりも本文の分量がやや増加し、説明問題の解答行数も合計8行と1行増えた。抜き出し問題が姿を消す一方で、問三は数年ぶりに全5行を埋めさせる設問だった。内容面では、ことばの「センス」を培う教育について現状を憂える評論文であり、読解は難しくなかった。

大問二
 出典は菊池寛の小説で、時代は古いものの、分量が減少した上に、恩人を亡くした悲しみという普遍的な事柄を描いており、わかりやすい。解答の分量に変化はなく、問四では「恩返し」と「利己的」とをつなぐ論理、問六では「悲しみ」を他との対比で考えるのがポイント。

大問三
 和歌一首を含むことを考慮すれば、本文の分量は昨年とほぼ同じ。表現も平易で、夫婦の間を和歌が取りもつという内容も難しくないが、傍線部Aの現代語訳には少し注意が必要で、ここでつまずくと全体に響いたかも。問十で問われる「態度」をまとめるには力が問われた。

大問四
 本文・解答の分量と設問形式は例年どおりだが、単問の現代語訳はなかった。法治主義に対する徳治主義の優位を説く内容で、儒家的な思想の前提知識があれば一層理解しやすい。問十五は傍線部自体の解釈がやや難しく、本文前半と関連付けて説明するのは少し大変だった。

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【小論文】

解説
 課題文の出典:(宇沢弘文『社会的共通資本』による)

 出題形式と解答字数は、ともに例年通りであり、課題文を読み、筆者の主張に即して傍線部の内容を説明した上で、自分の意見とあわせて1000字以内で論じさせるものである。さらに、課題文の内容・主題に関しても、一昨年の「コミュニケーション」、昨年の「遊び心」に続き、「文化と自然環境」という、文学部の学問領域に深く関連したテーマである。加えて、広い含みを持つテーマに対し、課題文によって受験生に一定の視座・論点を与えつつ、発展的な論述を求める点でも、共通性・一貫性をもつ。一方、課題文の分量は約2000字で、昨年度よりもやや減少した。

 課題文の出典は、宇沢弘文『社会的共通資本』(岩波新書、2000年刊)。筆者の宇沢弘文(うざわ ひろふみ)氏は日本の経済学者(1928〜2014年)で、米シカゴ大学や東京大学の教授を歴任し、日本学士院会員や文化勲章など多くの栄誉に浴した。理論経済や環境経済の分野で先駆的な業績を残す一方、日本の経済・社会問題に警鐘を鳴らす発言でも知られ、熊本との関連では水俣病の問題にも取り組んだ。今回の課題文もまた、社会的共通資本である自然環境と近代的人間の利己的活動との矛盾を問う内容である。

 解答上の主要なポイントとしては、まず傍線部を説明するために、文化や自然の概念に関する「伝統的社会」と「近代社会」との対比的関係に留意して理解する読解力、それを的確かつ簡潔に要約する表現力が問われる。さらに、意見論述に際しては、文化と自然環境の関係について、筆者の問題意識にしっかりと関連付けつつ、自分の意見として何を加えるかという応答力や思考力、また、その意見を形成するための論理性や説得力が、答案の評価に大きく影響するだろう。

 総じて、過去問などで近年の出題形式に即しながら上記の力を磨いてきたかどうかが正面から問われる点で、受験生の日頃の学習や努力の成果を測る、正統的かつ良心的な出題といえる。課題文の分量の減少、テーマの明快さもあり、受験生にとっては例年よりも取り組みやすかったと思われる。

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【数学】

解説
■数学@

大問1:積分(数学U)
大問2:空間ベクトル(数学B)
大問3:微分、数列(数学U・B)
大問4:高次方程式、場合の数(数学U・A)

 全体的に昨年度よりやや難化した。大問1と3をきちんと解けたかどうかで得点に差が付いたのではないか。特に大問3は典型的な問題で、かつ誘導が丁寧であり、最も取り組みやすかった。そして大問1も典型的な問題であり、定積分の性質が分かっていれば、計算もスムーズに進められるものであった。

 一方、大問2は文系の生徒の多くが苦手としている空間ベクトルの問題で、内容としても問1から解法が浮かばなかった生徒が多いのではないか。また、大問4も三次と二次の連立不等式の解のうち、整数であるものを求めるという、普段あまり扱わない内容であり、問2以降は特に解くのが厳しかった。

■数学A

大問1:空間ベクトル(数学B)
大問2:微分・数列(数学U・B)
大問3:複素数平面(数学V)
大問4:積分(数学V)

 全体的に取り組みにくい問題が増え、昨年度よりやや難化した。大問2および大問4の問1・2を解けたかどうかで得点に差が付いたのではないか。大問3も解けたとすれば、かなり差を付けられたと思われる。大問2は文系の大問3との共通問題で、内容も典型的な物であり、ぜひ完答したい。また、大問4は問2までは特に難しいものではなかった。

 一方、大問1は2直線の交点が線分上にあることをいかに数式で表すか、など図形的に考察しないといけない問題で、難しい。また、大問3は問題文中の式と問1の式との関わりを見つけ、wに着目して整理できたかどうかで出来が分かれると思われるが、問1を解ければ、問2と3は難しくない。

■数学B

大問1:空間ベクトル(数学B)
大問2:複素数平面(数学V)
大問3:積分(数学V)
大問4:積分、極限(数学V)

 全体的に取り組みにくい問題が増え、昨年度より難化した。大問2と大問3を解けたかどうかで得点に差が付いたのではないか。大問2は問1を解答できれば、問2と3は医学科受験生なら解けて欲しいレベルの問題。ただ、問1は問題文中の式と問1の式との関わりを見つけるために、注目すべきポイントが分かりづらかったと思われる。また、大問3は、問1は医学科受験生なら解けて欲しいレベルで、問2と3は高い計算力を問われているので、出来が分かれたと思われる。問3は媒介変数tを消去して、曲線Cが双曲線の一部であることに気づいてグラフを図示できると見通しが良くなる。

 大問1は問1から手が出ない受験生が多かったのではないか。空間ベクトルの問題であるが、座標の表示が無く、図も書けない中で解く必要があった。また、大問4の積分の問題は、絶対値の中身の関数の周期性(正負の周期性)に気づけたかどうかがポイントであったが、かなりの難問であった。

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【理科】

■ 物理

解説
大問1: 力学「浮力と圧力」
大問2: 電磁気「円環状のソレノイド」
大問3: 熱力学「等温圧縮における気体分子の運動」

 極端に易化した昨年から極端に難化した。特に大問2は鉄心に空隙を作るという目新しい設定で問4が難しい。大問3も類題をやったことがなければ問3以降全く手が付かなかったであろう。仮にすべての問題が解ける受験生であっても、解答用紙に60分以内で説明を添えて答案を完成させるのは時間的に相当困難であったと思われる。医学部志望者でも点数を8割集められればかなり健闘したと言えるのではないか。すべての大問が難しく、コロナ禍による学習の遅れの影響も考えると、特に現役生にとっては厳しい試験となったであろう。

 大問1は液体中で浮力を受けるボールの運動で、全体を通して思考力を問う良問ではあるものの、見慣れぬ設定を理解するのに時間が必要で、問4を解けたかどうかで大きく差が付いたものと思われる。他の大問2つの序盤で行き詰った人は、この大問に時間を掛けて出来れば完答を目指したいという感じだっただろう。

 大問2は磁化された鉄心のふるまいに関する類題を解いたことがなければ、得点率がかなり低くなったであろう。比誘電率のコンデンサーに関する演習はやっていても、比透磁率を用いたコイルの問題を解いたことがある受験生はかなり少数であったと思われる。問4が解けなくても問5と問6は独立していて解けるが、確信を持って答えを出せた人はほぼいないであろう。

 大問3はピストンの移動によって衝突の際に気体分子の速さが変化する問題で、この類の問題では一番高度な出題パターンである。「微小変化においては(定圧変化に限らず)圧力を一定と見なせる」ことを知っていなければ、問2でつまずいてしまう。問5もピストンとの衝突で増加した気体分子の速さが、熱源との衝突によって(熱としてエネルギーを放出した結果)速さのx成分が再びvxに戻るということを理解できたかどうかで差が付く。問6の説明もどこまで詳しく書けばいいのかが判断しにくく、答案作成に苦労したものと思われる。

 なお、今月11日に壺溪塾で行われた「熊大プレ過去問演習会」の大問2(熱力学)に本問と同様の問題設定および設問があったため、それを受けていた受験生であれば難所の問3にも対応できたであろう。

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■ 化学

解説
大問1: 化学結合・溶解度
大問2: 酸化還元・反応速度
大問3: 構造推定

 今年も昨年に続いて大問数は3であった。筆算を要する計算問題が多く、すべての問題を解くには60分では足りなかったかもしれない。一方で論述問題は例年と同程度の分量・難易度であった。

 大問1は「どう解けばいい」のか、「何を問おうとしている」のかはわかりやすい問題であったが計算は非常に煩雑であり、論述問題については近年の傾向と同じくどこまで書けばよいのか迷った受験生は多かったのではないだろうか。大問2はチオ硫酸ナトリウムの半反応式(記載されていない教科書もある)を与えずに、酸化還元の反応式を完成させるのは受験生にとって酷だったように思える。大問3は有機化学を苦手としている、あるいは演習が不足している人にとっては難しかったかもしれない。総じて、計算問題を後回しにして解いた人はそれなりの点数が取れるような問題であった。医学科志望者については解ける箇所を確実に解き、計算問題で得点を積み上げる必要があったのではないだろうか。

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■ 生物

解説
大問1: 遺伝子、免疫、分子進化
大問2: 発生、筋肉
大問3: 進化、系統、生態系、個体群

 一部の論述問題を除き、全般的に教科書で習った内容を理解していれば解ける標準的な問題であった。ただし、全体の分量が多いため、短時間で問題を解いていく処理スピードが求められた。

 大問1は入試問題に頻出の内容で、解きやすい問題であった。計算問題が2題あったが、これも標準的な難易度であった。

 大問2は全て知識問題で、大問1と同様、定番問題であった。問4のエにおいて文中の間違いを正すという新しい出題形式が見られたが、特に難しいものでは無かった。

 大問3は各問でジャンルが異なり、幅広い分野からの出題であった。問1のエと問2のイの論述問題が大問1〜3を通して、最も難しい問題であり、これをどの程度得点できたかで(特に医学科受験生の間では)差が付いたと思われる。問1のエは100字という字数を満たすために共進化の具体例を挙げる必要があり、問2のイは海中における生物量ピラミッドの逆転というあまり見ないテーマの論述であったため、それぞれ完答するのは難しかったのではないか。

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■ 地学

解説
大問1: 水の循環と堆積構造・環境・石油
大問2: プレート運動と火山
大問3: 地球大気の組成と二酸化炭素濃度
大問4: 惑星上の生命と火星探査機

 分量としては昨年度と同程度であるが、難易度はやや難化した(特に大問3)。それぞれの大問の中で、記述(大問1問5、大問2問2(2))や読図(大問3問2(2))で差が付いたと思われる。大問1問5の記述問題は、中生代における石油の成因についての問題であり、あまり教科書では見られないものであった。また、大問3問2(2)の読図問題では、普段あまり見かけない、アラスカにおける二酸化炭素濃度の変化について問われた。

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