令和5年度 熊本大学入試解答速報!
(注)このページに掲載の解答は速報版ですので、熊本日日新聞に掲載されたものとは異なる場合があります。また、解答や解説に訂正等があった場合は、予告なく変更する場合があります。ご了承ください。
令和5年度 熊本大学個別学力試験 解答速報(2023.2.25)
壺溪塾では地元熊本の予備校として、熊本大学から出題される前期試験の入試問題研究を永年に亘り行って参りました。また、毎年、詳しい熊本大学入学試験解答・解説集を作成しております。さらに例年、壺溪塾のホームページに解答の速報版をアップし、二次試験の翌日には熊本日日新聞紙上に壺溪塾作成の解答が掲載されます。ここには、新聞紙上には紙面の都合で掲載されない小論文、地学の解答例も含めた全体をまとめました。ご参照ください。 |
英語 | 国語 | 小論文 | 数学@ | 数学A | 数学B | 物理 | 化学 | 生物 | 地学 | |
分量 | やや減少 | やや増加 | やや減少 | 昨年並 | やや増加 | 昨年並 | 増加 | やや増加 | やや増加 | 昨年並 |
難易度 | 昨年並 | 昨年並 | 昨年並 | やや易化 | やや易化 | やや易化 | やや難化 | やや難化 | やや難化 | やや難化 |
大問1 | 標準 | 標準 | 標準 | 標準 | 標準 | 標準 | やや難 | 標準 | やや難 | やや難 |
大問2 | 標準 | 標準 | ― | 標準 | 標準 | やや易 | 標準 | 標準 | 標準 | 標準 |
大問3 | やや難 | 標準 | ― | やや易 | やや難 | 標準 | やや難 | 標準 | 標準 | やや易 |
大問4 | やや易 | 標準 | ― | 標準 | やや難 | やや難 | ― | ― | ― | 難 |
解答 | 解答 | 解答 | 解答 | 解答 | 解答 | 解答 | 解答 | 解答 | 解答 | |
解説 | 解説 | 解説 | 解説 | 解説 | 解説 | 解説 | 解説 | 解説 | 解説 |
問題総評
2023年度の熊本大学個別学力試験の問題は、昨年度とくらべ、教科別の難易度の差はあったが、全体的により思考力を問う出題が増え、きちんと勉強した受験生に有利に働く問題が多く出題された。国公立大受験者にとって最初の関門となる共通テストは、昨年のような数学の難易度大幅アップはなかったものの、英語が読む分量が増え、平均点も下がり、その他の科目も全体的に読解力・思考力がものをいう問題となった。熊本大学から出題された記述式の問題は、難しすぎて手も足も出ないという問題は少なく、きちんと基礎を積み重ねることで取り組める問題が多く出題されたが、それだけに普段からじっくりと問題に向き合い、地道な努力を重ねてきた受験生が有利になったに違いない。共通テストも熊大からの個別学力試験も、高校や予備校で思考力を問われる問題と向き合い、自力で解くということを大事にしてきた受験生とそうでない受験生との差がつきやすい結果になったと思われる。 |
分量はやや減少し、全体的には解きやすく感じた受験生も多かったのではないだろうか。最も大きな変更点は大問4に語句群が与えられたことで、単語力に不安がある人にとっては楽になったと思われる。
1は英文の量が減少した。解答の字数制限は増えたものの、設問の誘導があるため、どこを抜き出して何を書けばいいかわからないということは減ったのではないだろうか。しかしながら、例年のことながら直訳では点数がもらえず、日本語としてまとめて書くといった国語的な能力が問われており、作問者の工夫が見てとれる。 2は問1が難しく感じたかもしれないが、それ以外は答えやすく、分量が減った分受験生としては楽になった。読みやすい文章であったことも併せて、なるべく高得点を取りたい問題であった。 3の自由英作文は昨年のように自分のことを書くのではなく、社会的・時事的な内容に戻ったため、多くの受験生が書きにくいと感じたのではないだろうか。知らずとも書けるとは思うが、普段からそのような内容に触れておけば何を書けばよいかという点で悩まないで済むため、様々な問題意識をもって過ごすことも重要かもしれない。 4は語句群のおかげで楽になった。文章自体も読みやすく、例年よりも易しく感じたであろう。しかし、可能な限り速やかに解く必要があるという観点からも、語彙力強化は欠かせない。語彙・口語表現を意識して学ぶことで高得点を取れるようにしたい。 |
解説
大問一 現代文(奥野克巳『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』による) 大問二 現代文(太宰治「ロマネスク」による) 大問三 古文(岳亭定岡『猿著聞集』による) 大問四 漢文(葛洪『抱朴子』による)
大問一 大問二 大問三 大問四 |
解説
課題文の出典:(久坂部羊『人はどう死ぬのか』による)
解答字数および主な出題形式の面では、十年以上変わらず今年度も、課題文を読んだ上で自分の意見を1000字以内で論じさせる出題である。また、課題文の分量も、昨年度より若干減少した程度で、大きな変化はなかった。ただし、課題文のテーマや細かな設問形式の面では、かなりの変化があった昨年度に引き続き、注目される出題傾向も存在する。第一に、いわゆる人文科学系学部の学問領域に直結したテーマと言うよりも、昨年度の「討論型世論調査」、そして今年度の「安楽死・尊厳死」というテーマは、いずれも具体的・現実的な課題や法制度に関するものであり、むしろ社会科学系や医療系の学部で多く出題されてきたものと言える。第二に、今年度も昨年度と同様に、課題文に傍線は引かれず、本文全体の内容の理解を総括的に問う設問の文言であった。一方で、昨年度とは違って、今年度は解答する際の「視点」を指定する細かい条件などは求められなかった。 課題文の出典は、久坂部羊『人はどう死ぬのか』(講談社現代新書、2022年3月刊)。筆者の久坂部羊(くさかべ よう)氏は1955年生まれの小説家・医師。大阪大学医学部卒業後に国内の医療機関、さらに海外でも複数の在外公館で医務官として勤務した。帰国後は在宅医療に従事する一方、2003年に作家としてデビューした。『破裂』や『悪医』(第3回日本医療小説大賞)などの小説の他に、本書のようなノンフィクションを含め、医療を扱った著書が多数ある。 解答上のポイントは、設問の明示するとおり、@安楽死や尊厳死について医師の立場から論じている課題文を参考にすること、A安楽死や尊厳死に対する自分の意見を述べること、の二点である。その際に留意すべきこととして、〈安楽死・尊厳死の相違点と共通点〉、〈安楽死・尊厳死の法制度化をめぐる現状や課題〉、〈安楽死・尊厳死への賛成意見と反対意見〉などの点に関して課題文の内容を整理し、答案の上で自らの読解として示す必要があるだろう。そのうえで、自らの意見・立場を明示し、そのように考える理由・根拠を挙げて、課題文の提示した論点とすり合わせながら、論理的かつ説得的に述べることが重要である。 よって、今年度もまた、共通点や相違点、対比的関係などに留意して課題文の内容を理解する読解力、それを的確かつ簡潔に要約する表現力が問われることに変わりはない。さらに、意見論述に際しては、死をめぐる当事者と家族、医療と社会との関係や矛盾・対立といった筆者の問題意識にしっかりと関連付けつつ、自分の意見として何を提示するかという応答力や思考力、その意見を形成するための論理性や説得力が、答案の評価に大きく影響するだろう。加えて、昨年と同様に、前提となる背景知識の有無、それらを踏まえた論述の現実妥当性も問われたはずだが、今回のテーマは同時に、死や個人の権利といった抽象性・普遍性をもつ問題でもあるため、倫理学・哲学的な考察と結びつけた論の展開もあり得ただろう点で、人文学系の領域に通底する出題であると見ることができる。 以上より、昨年度に続いて形式・内容面での変化はありつつも依然として、過去問などで近年の出題形式に即しながら練習を重ねてきた受験生にとっては、十分に力を発揮できる出題であったと言える。 |
【数学】
解説
■数学@
大問1: 数列(数学B) 近年難化傾向にあった数学@だが、今年はどれも解き方が見えやすく、手もつけやすかったのではないだろうか。どの問題でも点数を狙いにいけるセットであり、差はついたと思われる。大問1は誘導に乗っていけば解ける問題であり、完答を狙いたい。大問2は場合分けに慣れていればさほど難しくないが、普段から意識的に問題を解いているかで差がつくだろう。単位ベクトルが問題文にあり、面積を求めるなど、複雑に見える大問3は見かけ倒しであり、計算が煩雑そうに見えるが、解いてみるとそうでもなく、やや易しめの問題だった。大問4はいたって普通の微積の問題であった。全体としても教科書の章末問題レベルであり、高得点も狙えるが数学を苦手とする人にとっては点数が伸びにくい問題であったかもしれない。
大問1: 数列(数学B) 分量が少々増えたものの比較的手を出しやすいセットになった。例年通りではあるが、きちんと演習をこなしてきたか、習熟度を問われる問題であった。大問1は文系とほぼ同じ問題であるが、方向性は同じで解きやすい。一般的な問題でもあるので、大問2とともに可能なら高得点を狙いたい。大問3の(3)は計算量が多く、途中で不安になっても自分を信じて最後まで行けなければならず、そういった意味では難しかったかもしれない。大問4の (2)は(1)の形から解法に気づければ楽になるが、どれだけの受験生ができただろうか。(2)ができれば最後までは比較的楽であった。総合すると、大問1と大問2で点数を稼いで大問3と大問4で点数を積み上げられたかが合否の分かれ目になるだろう。
大問1: 確率(数学A) 全体としては“手は出せる”といった難易度・量であり一見すると易しく見える。しかし、最後まで解けたかと言われるとそれは難しく、例年よりは必要得点は高くなるかもしれないが、いわゆる超高得点を取るのは難しかったかもしれない。大問1は(2)までは解けるだろうが、(3)はきちんと場合分けの訓練をしておかないと難しく感じたかもしれない。大問2は今回のセットの中で最も易しく、完答すべき問題であった。大問3は(2)までは解きたい。(3) は落ち着いて積分できたが鍵となるが、医学部を目指すのであれば解いておきたい問題である。大問4は(2)までは解けるが、(3)は解答のように(2)を使わない方法が計算量・記述量を減らせて良い。素直に解くと大変であり、時間が足りなくなる可能性が高い。総じて完答を目指せない問題ではないが、どの問題をどこまで解くのかを考えて解く必要があったと言えるだろう。 |
【理科】
解説
大問1: 力学「2物体の衝突と鉛直面内の円運動」 大問2: 電磁気「一様な磁場中の導体棒の運動」 大問3: 原子物理「半減期」 学力の差を忠実に反映するセットであった昨年度と比較すると、今年の問題は3問とも計算量が多い上に正確さも求められたため、芋づる式な失点によって出来不出来が意外にはっきりと分かれたものと思われる。また、2年連続して大問3が原子物理の分野から出題されており、半減期をテーマとした標準的な問題ではあったものの、この分野からは出題されないはずだと対策を怠っていた受験生は苦戦を強いられたはず。これらを考慮すると、計算ミスによる失点を含めた上で医学部であれば80%、それ以外の学部であれば50%程度の得点が物理のボーダーラインとなったのではないかと予想される。特記事項としては、「問題文には単位が与えられているのに解答欄には与えられていない」という形式が久しぶりに取られていたことが挙げられる。答えに単位を付けていない場合、減点対象となっている可能性は捨てきれない。 大問1は完全非弾性衝突からの鉛直内の円運動という頻出テーマからの出題であった。ただ、衝突前のBの速さを最後の小問まで用いるため、計算過程や答えが全体を通して多少煩雑になる。また、上でも述べたように(問2)や(問3)あたりで計算ミスをしてしまうと、残りの小問もすべて答えがずれてしまうので注意力も必要となる。基本的には、最後の答え以外は衝突後の速さVのままで計算した方が見通しが良く、そうした工夫をしたかどうかでも正答率が分かれたものと思われる。 大問2も電磁気における導体棒の運動ということで頻出テーマからの出題となった。設問もオーソドックスなものばかりでスラスラ解けた受験生も少なくないであろう。ただし、答えの見た目だけは煩雑になるし、序盤でのsinとcosの取り違いなどが起きるとこちらも芋づる式に失点するので注意が必要となる。また、(問4)と(問5)の記述スペースの縦幅と解答欄の横幅がともに狭いので、答案を書くのに苦労した人も一定数いたことが予想される。 大問3は2年連続での原子物理からの出題に一瞬とまどうものの、(問4)までは例題〜標準レベルであった。指数計算さえ正確にできれば半減期の定義がうろ覚えであったとしても答えは何とか出せたはず。(問5)は(問3)を利用することに気付かなくても答えは出せるので程よく出来不出来が分かれるが、(問6)は突出して難易度が上がる。おそらく今年の分量でこの問題に時間を割く余裕はほぼなかったと思われるので、本番では思い切って捨て問にして、今まで解いてきた問題の見直しに時間を使った方が総得点の期待値は高くなったであろう。 |
解説
大問1: 総合問題(小問集合) 大問2: 無機総合 大問3: 有機総合 昨年が易しかったため昨年比ではやや難化したことになるが、全体としては標準的な問題であり、差がつくことが予想される。分量は増え、特に計算問題は煩雑ではないものの計算量は増えた。逆に論述問題は極端に減り、思考問題もほぼなかった。また、用語問題を含め単純な知識問題が増えた印象も強い。形式としては“すべて選べ”は初であり、記号で答える問題は目新しく感じる。相変わらず有効数字の指定はバラバラであり、戸惑った受験生もいたかもしれない。大問1は重水素の問題を除いて一般的な問題と言えるだろう。その重水素の問いも極端に難しくはなく、基本に忠実に、落ち着けば解けるものであった。大問2はさほど難しくはないが、苦手とする受験生にとっては厳しかったかもしれない。大問3はほとんどが基本的な問題であったが、構造推定の問題は酸素の数が多く面食らった受験生もいただろう。例年のことだが、できる受験生ほどどこまで書くか悩む問題もあり、可能な限り速く解いてもう一つの選択科目に時間を裂きたい。 |
解説
大問1: 細胞と分子、バイオテクノロジー 大問2: ヒトの体内環境 大問3: 生物群集と生態系、代謝 例年通り読む量が多く、論述量が増えた印象がある。完璧に書こうとすると時間が足りなくなる可能性もあり、今年はそういった意味での難しさがあった。どこまで書くか、どこを解くのかを考えながら解く必要がある。昨年が易しかった分、今年の問題は難しく感じたのではないだろうか。大問1の(3)などは塩基配列をもとに繋ぎ合わせる作業に時間をかけすぎてしまうと、他の問題が解けなくなる恐れがある。解かない勇気を持つことも重要である。大問2と大問3は記述量が多く、問題文の解釈に時間を要する。基礎〜標準の問題が主であるので、普段から基礎知識を疎かにせず、論述問題に慣れておくことができれば比較的高得点を取れる問題ではあった。 |
解説
大問1: プレート運動とマグマの多様性 大問2: 地史と大量絶滅 大問3: 水の状態変化・断熱減率・フェーン 大問4: 恒星の進化・ハビタブルゾーン・太陽の特徴 例年に比べて論述が増加し、全体的な難易度としてはやや難化した。大問1の(3)の同化作用とマグマ混合の用語説明は目新しく、受験生にとって書きにくかったかもしれない。大問2の論述も指定語句が多く、逆に書きやすかったが“高次”の使い方で迷った受験生もいただろう。計算問題も意図してか煩雑であった。大問3は一般的な問題であり、高得点を取りたいところであった。大問4は問題設定がもう少し分かりやすければ解きやすかったかもしれない。ハビタブルゾーンという近年頻出の問題であり、解きやすいと感じた受験生もいただろう。例年、地球・気象・天体といった地学の根幹ともいえる単元がバランスよく出題されており、演習を積んで様々な問題に慣れておく必要がある。 |
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